続・危険なアイツと同居生活








練習が終わったのは、深夜になってからだった。

慎吾は陽介に用事があると言って九時前に出ていったが、それ以外のメンバーは最後まで真剣だった。

……まるで、今までのふざけていた時間を取り戻すように。






「ライブって、そんなに大変なの?」




そう聞くと、蒼が教えてくれる。




「うん。曲の構成だけじゃなくて、アレンジ、MC、それに動きや目線まで練習しないといけないんだ」




そうなんだ。

ライブで見せるFは、緻密に計算されたものだったんだね。




「最近たるんでたからね。

確かに、今の状態でライブなんて無理だなぁ」




やっぱり、プロは違う。

学祭の時のあたしなんて、弾くので精一杯だった。

目線はいつもギター。

ただ突っ立って弾くのみ。

プロは、それでは許されないんだ。




「お金もらってるんだからね。

俺たちも全力でやらなきゃ」




蒼はそう言って手を見つめる。

その無骨で大きな手。

マメが出来て傷痕の残る手には、今までの辛かった道のりが記されているようだった。




< 281 / 781 >

この作品をシェア

pagetop