続・危険なアイツと同居生活
練習が終わったのは、深夜になってからだった。
慎吾は陽介に用事があると言って九時前に出ていったが、それ以外のメンバーは最後まで真剣だった。
……まるで、今までのふざけていた時間を取り戻すように。
「ライブって、そんなに大変なの?」
そう聞くと、蒼が教えてくれる。
「うん。曲の構成だけじゃなくて、アレンジ、MC、それに動きや目線まで練習しないといけないんだ」
そうなんだ。
ライブで見せるFは、緻密に計算されたものだったんだね。
「最近たるんでたからね。
確かに、今の状態でライブなんて無理だなぁ」
やっぱり、プロは違う。
学祭の時のあたしなんて、弾くので精一杯だった。
目線はいつもギター。
ただ突っ立って弾くのみ。
プロは、それでは許されないんだ。
「お金もらってるんだからね。
俺たちも全力でやらなきゃ」
蒼はそう言って手を見つめる。
その無骨で大きな手。
マメが出来て傷痕の残る手には、今までの辛かった道のりが記されているようだった。