続・危険なアイツと同居生活




演奏する三人は黒いTシャツを着ていて、残りはチェックのシャツをジーンズにインしている。

大きなリュックを背負って、変な眼鏡をかけている人もいた。




「あいつら、何するんだ?」



「オタ芸」



「プッ……」




賢一はさもおかしそうに笑う。

あぁ、賢一なら喜んでくれると思ったよ。

さすがFのメンバー。F

の四分の三は冗談で出来ている。





「賢一も出る?」



「マジで出てぇけど、試食会に戻らねぇと。

……例の発作大丈夫かよ」



「三分前からだから」



「そうだな」




そう言って時計を見て、慌ただしく去っていった。

俺はそんな賢一を見て、何だか懐かしい気分になっていた。






昔はライブが当たり前の生活だった。

ライブを通して、Fとの絆を深めていった。

ときにはぶつかり、ときには泣いて。

楽しい時間だった。





目指していた建築士となれた今、時々ふと寂しくなった。

俺は夢を叶えたはずなのに。

何かが足りなかった。

それが分かった気がしたんだ。




俺は、やっぱりライブが好き。

Fが好き。

今はバラバラだけど、時々急にライブをしたりしたい。

がむしゃらに練習して、達成感を味わいたい。

今回のそんな機会を作ってくれた優弥に、本当に感謝している。




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