続・危険なアイツと同居生活
ー中山sideー
急に現れた玄は、急に去っていった。
玄は俺の知っている野生的で荒っぽい玄ではなく、ただの気のいい兄ちゃんだった。
……まるで戸崎さんのようだった。
俺は改めて戸崎さんを見る。
戸崎さんは、本当に馬鹿だ。
馬鹿なことを本気でする。
その格好、艶に失礼だろ。
だけど、戸崎さんには人を惹きつける力があって。
今回の親睦会も、課長までもが一芸大会に出ることとなった。
そんな課長も、戸崎さんが大好きだ。
お馬鹿な戸崎さんは、まるで碧とは思えない。
だけど、確かに碧だ。
俺のギターに、笑顔で弦を張ってくれた。
そして、ピックをくれた。
そのピックのうちの一つには、見覚えのあるFという文字がプリントされている。
そして、裏には直筆の碧のサイン。
俺が持っている宝物と同じだ。
そして、それに見入ってしまう俺がいた。