喩えその時が来たとしても
じゅ……十倍も気持ちイイんだ……。
好きな人とのソレは、ただそれだけで感覚を何倍にも鋭敏にするという。ハムセックスはその更に十倍もイイとなるとどう? ハム先輩から攻められるハム私の精神はその悦楽に……めくるめく快感に耐え切れるかしら!
ああ、先輩のお部屋へ再度お邪魔するこの日に備えて、アノ日仕様の態勢にしておいて正解だった! だって私の妄想は成層圏を突き抜け宇宙空間まで駆け昇り、それに伴ってワガママな私の泉が好き放題に溢れ返っているんだもの。
お兄様の言葉を伝えたきり黙り込んでしまった私(妄想が過ぎて言葉が出なかった私)に、先輩がセクシーボイスで語り掛けてきた。
「めぐどうした? 兄貴がいやらしくて馬鹿らしくなったか? 嫌ならやめてもいいんだぞ?」
やめてもいい? やめるなんてイヤッ、駄目っ! やめないで先輩っ! 私を絶頂に連れてって。
「こ、このまま続けてっ!」
私は先輩に負けじと、セクシー……と思われるボイスで返した。
『ハハハ、そうだ続けようめぐみちゃん。めぐみちゃんに続けて貰わなくちゃ俺も困るしな……って、そうでしたお兄様』
お兄様が言うように、私は妄想にひた走ってる場合じゃない。しっかり通訳しないとイケナイのよ! お兄様は生まれ変わってまで先輩に伝えたかった事が有るんだから! そう……それは……。
「運袋……ですよね」
それを聞いてお兄様は、キャンベルちゃん(仮称)から離れるとまた猛然と落ち着きの無い行動を取り始めた。
『そうだよめぐみちゃん、良く思い出したな。哲也も良く聞け……だそうです』
「お、おう……運袋……な……」
その行動と同様、目まぐるしく変わるお兄様の態度に先輩はついて行けないみたい。それもそうよね、さっきまでキャンベルちゃん(仮称)へ馬乗り、いえハム乗りになってヘコヘコしていたんだもの。急に真面目になれと言われてもそれは無理というものだわ。
『前にも言ったように、お前の運袋の口は開いている。そこからお前の運はダダ漏れしているんだ』
「ダダ漏れ……」
『そうだ。ジャバジャバと周りの者達へラッキーを提供し続けてるんだ』
周りに提供! それだわ、今まで職人さんたちが死ぬような事故に遭っても無事で済んだのは、先輩の運の所為だったんだわっ!
「それには思い当たるフシが有る。だがしかし兄貴、それが何でイケナイんだ? 周りに良い事してるんだろ?」
お兄様は一瞬立ち止まって先輩を見上げると、これでもかという程かぶりを振った。