喩えその時が来たとしても
一体貴方は今、何を想い、何を見て、何をしているのでしょう。やがて訪れるかも知れない『死』の恐怖と、孤独の中で懸命に戦っているのでしょうか。
貴方が煙のように姿を消してしまってからというもの、私は生きている実感を失ってしまいました。日々の仕事も、只勢いに委せて惰性でやっている始末。貴方の期待に応える為に持ち合わせていたモチベーションも向上心も何処へやら。今は何とか怒られずに済んでいるだけの状況です。家に帰っても何をするでもなく、只時の過ぎるに委せている次第。
私のことは覚えてくれているでしょうか。ふと何かの時にでも、思い出してくれているのでしょうか。
人に縋らずにはいられなくなったら、どうか私のことを思い出して下さい。人の温もりが欲しくなったら、どうぞ私のことを抱いて下さい。突然貴方が目の前に現れて、何も言わずに押し倒されたとしても、私は貴方に身体を開くでしょう。
壊れてしまってもいい。貴方を癒せるのならそれでいいの。貴方の行き場を失った怒りを、悲しみを、寂しさを、そして恐怖を……みんなみんな私に注いで、貴方には楽になって欲しい。
「哲也……」
まだ呼んだことの無いその名前を呟いては、そこに居る筈もない彼を抱き締める。心は悲しみでいっぱいいっぱいなのに、彼のことを思うと自然に私の泉が溢れそうになる。
貴方に逢えなくなって、私は3kg痩せました。切なさが箸を進ませないのです。愛しさが食欲を妨げるのです。
心なしかブラにも余裕が出来てきたように感じます。このまま貴方と逢えなければ、貴方の大好きだったこの胸も、ペッタンコになってしまいますよ。だからどうか、早い内にまた姿を見せて。「めぐ、好きだよ」ってセクシーヴォイスで囁いて。優しい愛撫で私の琴線を震わせて。激しい情熱で私を絶頂に導いて!
ああ、また淫らな方向へ妄想が走り出してしまった。互いの体温を交換してしまった今、もう純粋に貴方を思うことなど出来ないのでしょうか。こんな穢い肉欲の存在しない、貴方を思う強い気持ちだけを届けることは出来ないのでしょうか。
私の想いはいつも堂々巡り。逢いたい、憎い、愛しい、切ない、恋しい、欲しい、欲しい、欲しい!
結局淫猥な感情に辿り着くのは、私の劣情のせい。不潔な、邪ヨコシマな、下衆で破廉恥な私の本能は、ドロドロに凝り固まった性欲の権化。
こんな人間が貴方を思うことこそ、迷惑なのかも知れませんね。