自由人女子に一目惚れした天真爛漫ヤンキー
大人になること
【蘭子side】
夏休みに突入した蒸し暑い夏。
黙ってるのに額に汗が滲む。
……化粧崩れるから切実に嫌だ。
「うーん……蘭子ちゃーん……痛い」
「そうだね、痛いね。でも、まだ病院来るなだって」
「痛いー……」
「痛いね」
ありすとのやり取りはこれが何回目だろうか。
お腹を抱えてうずくまるありすをあたしはただ、見守ることしか出来ない。
7月でちょうど臨月。
しかも予定日。
音瀬からの頼みで、ここ2日間はありすのアパートに泊り込み。
仕事があるから側にいてやれない代わりみたい。
「うぅー……赤ちゃんなのに、もう反抗期?」
「随分と早い反抗期だね」
「痛い。蘭子ちゃん、痛い!」
「病院に電話してみる?多分、まだ来るなって言われそうだけど」
「してみる!!」
お母さんになるって大変だ。
あたしは、ありすにスマホを渡してジーっと隣にいるだけ。
お母さんの有り難みがなんか……分かるかも。