遠恋
「どうだ?行かないのか?」
『行くに決まってるじゃん、あたりまえ』
「最初から行くつもりだったしね~」
芝田は笑いながら立ち上がる。
「ならよかった!はやく駐車場にこいよ」
そういって指導室を出ていった。
「ねぇ、三ツ倉青年会ってどこの学校と
合同だっけ?」
『んー、確か...』
「あっ!」
いきなり真凛が叫ぶから
びくっとして、胸がきゅーと傷んだ。
『なに!まじびっくりしたあ~』
「合同のとこイケメン多いとこじゃん!」
ああ、確かにそうだったかも...
高校はいってから初めて入った青年会だけど
先輩から合同の学校はイケメンが多いと
聞いたことがある。
....
てゆうか、真凛めっちゃにやけてるし!
「かわいくしていかなきゃね!」
『え、わざわざめんどくさい』
私は男に興味ない。
理由は...あの人以外に好きになるなんて
ありえないから。
私に告白してくる男は
みんな、ヤンキーだし、ちゃらけてるし
この告白に愛なんてないことはわかってた。
適当に付き合うだけで
デートに誘われても、会っても、話さない。
別れよう。
といわれたのなら、
わかった。
そうなんのためらいもなく返事する。
だって、好きじゃないから。
愛してないから、愛してくれてないから。
これでも、キスは1度しかしたことない。
まあ、あれはキスにカウントされるか
わかんないんだけどね。
真凛は、もう、経験済みらしいけど。
私は好きなひととしかキスしたくないし
もちろんそれ以上なんて尚更。
......
私の初恋は中1の入学式。
真凛と入学式に向かってるとき
私の後ろから、男の騒ぎ声が聞こえる。
ぱっと何気なく振り替えると
学ランを着くずしていて、ボンタンを履き
髪の明るい男の人達がいた。
私と真凛は小学生ながら生意気に
金髪にしていたけど
入学式だから、赤色に染め直していた。
冬服きてるってことは同級生かぁ
金髪とかいるじゃん、
真凛と私染め直さなくてもよかったかも。
そんなことを思いながら前を向いて
私は、真凛とお喋りを再開した。
すると
「おい、ヤンキーちび」
その声がして私の髪を誰かが引っ張った。
「はっ?!」
童謡しながらも振り替えると
そこにいたのは多分さっきまで後ろで
騒いでいた男の人のひとりだと思う。
髪が赤く、襟足が肩からたれていて
切れ長い一重の目、薄く綺麗なくちびる。
「おい、ヤンキーちび」
その声を思い出すと、低く透き通った声。
私の胸はドキンッと騒ぎ出す。
『....なんですか?』
平常心を装いたかったけど
顔を見ると平常心じゃいられなかった。
「これ、お前のだろ?」
そこには、私がお母さんからもらった
誕生日プレゼントの指輪。
『なんで持ってるの?』
なんか、嫌な気持ちで眉間にしわをよせる。
「せっかく拾ってやったのに、なんだよその顔
むかつくんだけど」
そういって、私を睨んだ。
拾った...?
ああ、なんだ、落としたのか。
「ほら、はやく手だせよ」
そういって、私の左手をとった。
ーーードキン
聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい
速くなる鼓動。
男の人は私の手に指輪をおいた。
『ありがとう』
軽くうつむきながら顔をちらっとみた。
「別に」
そういって振り替えって行ってしまう。
スタスタ歩く男らしい背中に目が離せない。
「ねぇ、友姫、あんたわかりやすすぎ」
そういって、クスクス笑う真凛。
『え?』
「一目惚れだね」
え、うそ、一目惚れ?
ありえないよ。なんで性格もわからない人を
好きになるの?
一目惚れとかありえないし、なりたくない。
だって、見た目で決めるってことでしょ?
『そ、そんなことないよ』
はぁ、でも、名前くらい聞きたかったな。
「名前くらい聞きたかったんでしょ?」
『え。なんでわかんの!?』
「だって、顔にかいてるもん」
私は顔を押さえた。
「入学式おわったら探せばいいじゃん♪」
真凛のその言葉に顔をあげた。
「ね?とりあえず入学式いこっ♪」
そういって真凛は私の手をひっぱる。
ーーーひとめぼれ?
ありえないよー!!
私は忘れられないよ。
入学式の出逢いから始まった恋に
貴方とのたくさんの思いで。
いまでも貴方は私の中に生きてるもん。
私に見せた、笑顔、そして、涙...
会いたいよ...
会いたいよ、大好きだよ、光希。
......
「ねぇ、ねぇってば!」
真凛につつかれて我にかえる。
たまにこうゆうことがあるんだよね。
『ごめん、考え事しててさ』
はははと軽く笑った私は無意識に
芝田の車に乗り込んでいたことに気づいた。
「また光希のこと思い出してた?」
『.....なんで?ち、違うよ?』
「うそつき!」
『ほ、ほんとだってば!』
すると真凛は私の頬をひっぱった。
『い、いたいよーっ』
「友姫をこんな顔にさせる奴は光希しかいない
かくしたって無駄、幼稚園から友姫の隣に
いるんだから、下手なうそつかないでよね」
そういって、私の頬から手を離した。
そして、顔を隠すようにして窓の外を見た。
そして、私の左手をぎゅっと握る。
『真凛?』
「私が側にいるから、そんな顔しないで。
友姫は幸せそうに笑っててほしい。」
太陽が窓から光を照らす。
真凛の頬にはキラキラ光る涙が流れていた。
私は手を握り返した。
『真凛こそ、そんな顔私の前でしないでよね
私は真凛がいれば幸せなんだから』
そう真凛に笑いかけた。
すると、真凛は涙をふいて、私をみる。
そして、ふたりで笑い会う。
うん、幸せだよ。
真凛のおかげで幸せなんだよ。ありがとう。