臆病な恋
「──はい、これでいい?」
「おう、さんきゅ」
古典の教科書を持って帰ろうとした蒼太がこっちを振り向き、
「…さっきのやつ、誰?」
蒼太の言う、さっきのやつって…
「高島くんがどうかした?」
「…あいつとは付き合ってるわけじゃないんだよな?」
いきなり蒼太がそんなことを言うので、
「付き合ってるなんて、あ…ありえないよ!」
すると、蒼太はニヤリと微笑み、
「じゃあ、遠慮なく攻めていいわけだ。…覚悟しとけよ?」
そう言って行ってしまった。
「そ、そんなこと言われても…」
雪音は、中学の頃とは違う蒼太に少しだけドキドキしていた。