臆病な恋
「位置について、よーい…」
パンッという大きな音で、選手たちが
勢いよく走り出した。
「あれ、蒼太じゃない?」
走っている選手の中に乃木蒼太
(のぎ そうた)がいた。
彼もまた、同じ中学なのだ。
すると、走り終わった蒼太がこっちを
見て、雪音たちに気づいた。
雪音が手を振ると、蒼太も振り返し
ながら、こっちへやってきた。
「何やってんの?」
と、からかい口調で聞いてきた。
「仕事だよ、仕事!
体育祭の様子を撮らなきゃだから」
雪音はそう言って手に持っていたカメラを蒼太に見せた。
「写真部だっけ?」
「違う、新聞部!」
「うそ、知ってる」