臆病な恋
「ああ、夏井さんか」
特に驚いた様子もない博文。
「前にもこんなことあったよね」
瑠佳はボソッと呟いた。
「え、前?」
博文は瑠佳の言葉に聞き直す。
「文化祭の準備のときにもこんな風に
ぶつかったの、覚えてないよね」
「あったね、そんなことも。
…でも、もっと前にもこんな風にぶつかったことあるよ」
「え…?」
瑠佳は頭の記憶を手繰ったが
それらしい記憶は出てこなかった。
すると博文が
「入学式のときなんだけど──…」