二次創作ドラゴンクエスト~深海の楽園~
「海賊の物を拝借して祠に行くのか…なんか罰当たりな気がするけどな…」
「いいんだよ別に。安全のためだ。……おっ、見えてきたぞ。」
グレイが指差した先には、大きな口をぽっかりと開けた洞窟があった。昔は深海龍の住みかだと噂された洞窟であるが、そのような巨大生物が住んでいるような痕跡はなく、今はここに海の神を崇めるための祠だけが残されている。
「さぁ、急ごうぜレド!村長待たせたら悪いからな」
「そうだな、走るぞ!」
二人は勢いよく走って行き、静寂とした洞窟の中に入っていった。洞窟内は高純度の翡翠が岩肌に含まれており、洞窟の入口から入り込んだ光は翡翠を反射しているため意外と明るい。二人はゴツゴツした足元に気を付けながら、奥に見える祠へと向かって行った。
「ハァハァ…。やっと着いたな、大丈夫かレド?」
「あぁ、これくらい平気さ。………あれ、村長は?」
祠の周りは岩を全て取り払っており、海岸沿いの砂浜から取ってきた砂を辺りに敷き詰めてあった。祠は建物のように荘厳なものではなく、丈夫な木でできた木製のものであった。目の前の台座には、海の神と言われる恐ろしい形相をした赤い半魚人の置物があり、その下には8枚の皿があった。そのうちの6枚には、血が入っていた。
「うわっ、サムの野郎…あれだけ自信ないとか言ってたのに一番多く捧げてやがる…」
「村長!どこですか村長!……変だな…俺達がくるのを知っていたはずなのに…。」
「おいレド…まさか途中で帰ってたりってのはないよな…?」
『帰ってたりはしないさ。ほら、この通り。』
何者かの声が二人の背後から聞こえ、咄嗟に後ろを振り返った。そこには、腹部を血で赤く染めた村長が、よたよたと二人の元に歩み寄っていた。
「逃げるの…じゃ…。グレイ…レド…。」
「そっ、村長!?」
村長はその場に倒れ、動かなくなった。倒れた村長の背後には、この世の者とは思えない何者かのシルエットが、洞窟に入り込む月明かりによって映しだされていた。