殺戮都市
心が黒く染まって行くように感じる。


俺が、人の生き死にを決めるなんて考えた事もなかったから。


目の前で苦しそうにうずくまる女性に日本刀を向けるものの……まだその覚悟が出来ない。


防衛戦の時の男も、斉藤の時も、偶然みたいな物だし、俺が意識的に殺そうと思ったのは今が初めて。


「ご、ごめん……」


そう呟いて、女性の首に刃を付けるけど……手が動かない。


ここに来て、まだ俺は躊躇している。


他にも入って来るやつがいないとも限らないのに。


見えない鎖に繋がれているような気分だ。


何度も殺そうと、手に力を込めるけど……ただそれだけで。


いつまでもこのまま何も出来ずに立ち尽くすのかと思い始めたその時。










「……だからさ、こういう所で良い事してるやつらを狙うんだって」












自動ドアの向こう。


微かに聞こえたその声に、俺はこの場から離れて、近くの柱に身を隠した。


結局、殺す事が出来なかった。


あの様子じゃあ、死ぬのも時間の問題だろうけど……自分の心の弱さが嫌になる。









「そ、そんな事してる人達を殺すんですか?」









まずい、複数いる!


そう思ったと同時に……自動ドアが開かれた。
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