殺戮都市
殺意と覚悟
殺すしかない。


それ以外に、俺と恵梨香さんが生き残る道はない。


姿が見えた瞬間、躊躇せずに殺さなければならないのだ。


身体が動くかどうかは別として……状況は理解出来た。


「おい、誰かいるんだろ!?もしも東軍のやつなら腕を出せ!」


男の言葉に、俺は動けなかった。


腕を見て、その色で判断するのだろう。


俺は南軍だから、こいつらとは色が違う。


腕なんか出したら、隠れている場所まで分かってしまう。


ただでさえ、柱の陰なんていかにも怪しい場所に隠れているのに。


「……南軍だな。気を付けろ」


一気に緊張感が高まった。


ここにいるのは敵だと認識されて、警戒している人間の隙を突くのは容易な事じゃない。


意識を……他の場所に向けさせないと。


だけど……どうする?


柱の陰で、移動も出来ない。


持っているのは日本刀と端末だけで、端末は手放せないと考えると……日本刀だけでどうにかするしかない。


ジリジリと迫る敵の気配。


荒くなる呼吸を何とか落ち着けて、俺は必死に考えていた。


迫る敵の隙を突いて、どうにかして背後を取れないかと。
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