殺戮都市
微かに足音が聞こえる。


極力音を出さないように努めているのだろう。


それを頼りに飛び出すという事が出来ない。


考えてみれば、俺より戦い慣れていないやつなんて、この街ではそうはいないんだ。


皆油断して、俺は上手くそこを突いただけ。


だったら、今回も隙を作れば……。


そう思った俺は、鞘をイメージしてそれを空間から引き抜いた。


日本刀と一緒じゃないと出来ないかなと思ったけど……出来るみたいだ。


これをどうする?


大した事のない武器だと思わせて、油断させるか。


いや、人一人に重傷を負わせた武器だと警戒されるのがオチか。


だったら……。


俺は、前方にあるフロントを見て、鞘と日本刀を持ち替えた。


そして、フロントのカウンター目掛けて右手の鞘を投げたのだ。


壁に当たり、ガンッという音がロビーに響く。


カウンターの中で鞘が暴れているのだろう、カラカラと音を立てて転がったのが分かった。


「そこかっ!」


背後から男の声が聞こえた。


走り出して、柱の横を通り過ぎてフロントへと向かったのを見て……俺も弾かれるように柱の陰から飛び出した。
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