殺戮都市
カッコ良くなんてない。


転がるようにして、蹴りのラッシュから何とか逃れた俺は、壁に背を付けて日本刀を構えた。


この男、深追いはしてこない。


チャラチャラしてるだけのやつかと思ったら、用心深くてやりにくい。


甘く見ていたのは……俺の方だったかもしれないな。


「やっぱり口だけかよ。いるんだよな、俺が世界で一番強いとか思ってるガキがよ。でもな、そんなやつは叩き潰されるんだぜ?どうしようもない力に、プチってな」


状況は圧倒的に不利。


俺は蹴られ続けてダメージが蓄積しているのに、男はスーツが切れただけ。


何も、俺は世界最強だなんて思っていない。


むしろ、肝心な所で何も出来ない臆病者だとさえ思っている。


亜美を守る為に、目の前の男をどうにかしなければならないというのは分かっているのに……。


心のどこかに、まだ完全に踏み切れない部分がある。


「まずはテメェの腕を切り落とす。次は脚だ。その後に拷問してやるよ。死ねると思うなよ?殺さねえ方法なんていくらでもあるんだからよ」


言葉で俺を追い立てる。


追い詰められたこの状況では、ただの言葉でも恐ろしく感じる。
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