殺戮都市
「マ、マジか……よ」


一体何が起こったのか……もしかして、俺の気合いで日本刀から見えない刃が伸びたとか?


いや……そんな傷は見えない。


倒れて悶える男と……その傍らに立ち尽くす亜美。


その手には包丁が握られていて、血が滴り落ちている。


「あ……ああ……」


そうか……亜美だったのか。


俺の攻撃を避けられた時、亜美が包丁を持って背後から近付いていたんだ。


凄い勢いで飛び退いた男は、亜美が持つ包丁に背中から飛び込んで……。


「こ、このガキ……」


怒りに満ちた表情で、男が亜美を睨み付ける。


殺したわけじゃない。


鉈を握った腕はまだ動くし、怒りが亜美に向けられている。


人を刺した恐怖で身動きが取れない様子の亜美に……手は出させない!


恵梨香さんを守ると決めた時と同じ感覚。


何かが切れるような音が聞こえて……俺は、鉈を持った男の腕目掛けて日本刀を振り下ろした。















手に加わる微かな抵抗。


それから抜け出すように振り抜いた俺の目の前で、男の右腕が宙に舞う。


血を辺りに撒き散らせながら、ボトリと床に落ちた腕は……もう誰も襲う事は出来ないのだろう。
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