殺戮都市
「だからよ、分かんねえんだって!」
その交差点の右側の道。
一人の男が端末を手に、こちらに向かって歩いて来ていたのだ。
気付かれるとまずい。
そう判断した俺は、ポケットに手を突っ込んで色を隠した。
幸いにもその判断が早かったおかげか、男は俺を怪しむわけでもなく、端末で通信をしていた。
そりゃそうだよな……まさか南軍の人間が、こんな堂々と街中を歩いているなんて思わないだろう。
「いきなりサーチ出来なくなったんだから仕方ねえだろ!?俺のせいじゃねぇよ!」
男より早く交差点を通り過ぎ、なんとかやりすごしたと、ホッと一安心。
そのまま喫茶店に向かおうとしたけど……。
「おい、そこのやつ」
背後から……その男に声を掛けられてしまったのだ。
何だ……怪しい動きをしたつもりはないし、俺が南軍の人間だとは分からないはずなのに。
「な、何ですか?」
振り返って男を見てみると……ヨタヨタと、だらしのない歩き方でこちらに向かって歩いて来ていた。
「あのよ、どこかでホストみたいな格好の、チャラいやつ見なかったか?」