殺戮都市
「あわわわ……な、何してるんだ!に、逃げよう!!」


バーコードの声で、俺はハッと我に返った。


この凄惨な光景に意識を支配されていた……バーコードが声を掛けてくれなければ、鬼頭竜二の次は俺だったかもしれない。


怪物は鬼頭竜二を喰う事に集中していて、逃げる事は出来そうだけど……。


「逃げるって……どこに!?」


ここは俺が知らない街。


どこに逃げて良いかなんてさっぱり見当がつかないのだ。


「どこだって良いよ!とにかくここから離れるんだ!」


そう言って、車道から歩道へと走り出した。


脚が震えて上手く走る事が出来ないのか、その移動速度は遅い。


「あ、明美さん!俺達も逃げましょう!」


ガタガタと震え、涙を流して座り込んでいた明美さんに声を掛けるけど……俺の声は届いていないようで、何も反応してくれない。


俺だって脚が震えているし、他人の面倒を見ている余裕なんてないのに、どうすれば良いんだ。


「ほら、早く立って!逃げなきゃ俺達も喰わ……ああなっちゃいますよ!!」


喰われる……なんて言葉は使いたくなかった。


実際に喰われてはいるけれど、あんなの人の死に方ではないと思ったから。
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