殺戮都市
震える明美さんの腕を掴んで引き起こそうとすると、その手を振り払って、まるで俺までもが敵であるかのような表情を向けたのだ。


「い、いやっ!帰してよ……私を家に帰してよ!」


俺やバーコードよりも、ずっと混乱している様子で、俺に食ってかかる。


「お、俺だって帰りたいですよ!死にたくなかったら逃げるしかないでしょ!」


「逃げなくて良いから家に帰して!お願いだから!」


ボロボロと涙を流して懇願する明美さん。


俺にその力があるとでも思っているのか、そんな事も分からなくなって、目の前の死から目を逸らそうとしている。


「じゃあ、家に帰りましょう!」


どう言って良いか分からなくて、とにかくここから逃げ出したい一心で俺は、そんな事を口走った。


嘘でも何でも良い。


今はここから逃げなきゃならないのだから。


明美さんを置いて逃げても良かったけど、鬼頭竜二から助けようとしてくれたもんな。


「ほ、本当に!?早く帰りたい……帰ろう!」


何度も「帰る」という言葉を連呼する。


その気持ちは痛いほど分かる。


俺だって……こんな怪物がいる街にはいたくないから。
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