殺戮都市
逃げなきゃ……逃げなきゃ……じゃないと次は俺が殺される!


まだ明美さんが喰われたわけでもないのに、もうダメだと思い込んでいた俺は、ここから逃げ出そうと歩き出した。


怪物の気が、明美さんに向いているうちに。


ごめん、明美さん……助けてあげたいけど、俺まで死にたくない。


こんな姿を見たら、理沙は何て思うだろう。


きっと、「男なら助けなさいよ!」とか言って怒るんだろうな。


でも……仕方ないじゃないか。


こんな怪物を前にしたら、誰だって逃げようとするだろ?


俺が臆病なわけじゃない。


この状況で逃げないやつは……ただのバカだ。


そう自分に言い聞かせながら、数歩歩いた時だった。













「し、真治君……た、助け……」












明美さんの声に、俺の足は止まった。


ズルいだろ……こんな時に助けてなんて言うのは。


見捨てて逃げたら、物凄く後味が悪くなる。


でも、逃げるのが一番正しい選択なんだよ。


明美さん……分かってよ。


何度も何度も心の中で言い訳をして、自分の行動を正当化しようとする俺は……グッと歯を食いしばり、顔をしかめた。
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