殺戮都市
一口かじって、怪物がゴクリとそれを飲み込んだ瞬間、明美さんの身体が淡く光り、光の粒となって消え始めた。


その不思議な光景を、斬り掛かる事も忘れて俺は見ている事しか出来なかった。


何だこれ……明美さんはどうなったんだ?


喰われたんだよな?


鬼頭竜二と同じように喰われて死んだはずなのに……どうして消えたんだ?


この二人の違いが分からない。


そんな事を考えている間に……怪物の顔が俺の方を向く。


獲物がいなくなった。


だから次は俺が獲物だと言わんばかりの醜悪な顔を向けて。


脚が……今までにないくらいに震える。


ちょっとでも触られたら崩れ落ちてしまいそうなほど。


さっきまでは恐怖していたとは言え、殺意が別の場所に向いていた状態。


俺にその殺意が向けられて、恐怖はその時の比じゃない。


身体が動かないのに、頭の中は妙にクリアで、明美さんのように混乱出来たらどんなに気が楽かと思えるよ。


「く、来るなよ……き、来たら斬るぞ!」


そんな脅しなんて通じない。


怪物は、俺を喰う為に一歩踏み出して、容赦なく近付き始めたのだ。
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