殺戮都市
「いや、この階段を上がろうか。いくら何でも中央のエスカレーターは目立ち過ぎる。ここなら、壁に囲まれているから見付かる可能性は低いはずだ」


「見付かったら、騒がれる前に殺るって事ですか。何か強盗みたいですね」


人を殺す事に抵抗がなくなったわけじゃない。


相変わらず身体は震えるし、その人を取り巻く人達の事を考えると、未だに躊躇する。


だけど、俺が戦う事で、俺を必要としてくれている人が助かるならと考えると勇気が持てる。


「私達は漏れなく犯罪者だ。元の世界の法律に照らし合わせれば……の話だがな。とりあえず行くぞ。お喋りはここまでにしよう」


階段を指差し、屈んだまま移動を始めた恵梨香さん。


その後に続き、俺もフードコートを越えて階段に。


上の方から話し声は聞こえない。


誰もいないんじゃないかと思うほどの静けさが不気味だ。


「足音を立てるなよ。気配も消して行け」


「気配を消すって……どうやるんですか」


忍者でもない、ただの高校生の俺がそんな高等技術を身に付けているはずがないのに。


ゆっくりと階段を上る恵梨香さんの生脚を見ながら、極力足音を立てないように歩いた。
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