殺戮都市
行動を指示し、階段を上がった恵梨香さんは壁を背に立った。


靴を脱ぎ、スカートを捲って生脚を壁の切れ目から艶かしく出す。


脚だけじゃダメかもしれないから、顔を少し出して微笑んで見せる。


恵梨香さん程の美人なら、それだけで男は寄ってくるはずだ。


俺が教えた行動を、恥ずかしそうにやってくれたけど……見張りはやって来ない。


おかしいな……来ないはずがないんだけど。


いくら誘ってもやって来ない見張りに痺れを切らした恵梨香さん。


壁から顔を出して売り場を見ると、ムスッとした表情で俺の方に歩いて来たのだ。


「見張りなんていないじゃないか。これじゃあ私は良い笑い者だ!」


「そ、そんな事を言われても……でも大丈夫ですよ。俺しか見てませんから」


「少年に見られるのが一番恥ずかしい!」


怒る恵梨香さんを何とかなだめて、見張りがいないならいないで中に入ってみようという事になった。


元々の目的がキングの確認だし、それをしないで帰るわけにもいかないから。


俺と恵梨香さん、二人で売り場に入ると……本当に見張りはいなくて、避難口を示す緑の光があるだけ。


だけど……何か嫌な感じがそこには漂っていた。
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