殺戮都市
一歩、また一歩と近付いて、俺との距離を詰める。


日本刀を振りかぶったまま、俺はゆっくりと後退するけど……今にも転んでしまいそうだ。


ゆっくり……ゆっくりだ。


と、荒くなる呼吸を整えて、焦らないように慎重に下がる。


この調子じゃあ、喰われてしまう事は目に見えているけど、脚の震えさえなくなれば逃げられるかもしれないと思ったから。


だけど……そう上手く行くはずがなかった。















「グルルル……ガウッ!!」













威嚇の為に吠えた怪物の声に身がすくみ、膝がカクンと折れてしまったのだ。


「あ、ああっ!」


バランスを崩して地面に倒れた俺の隙を、怪物は見逃さなかった。


完全に倒れてしまうよりも早く、怪物の手が俺の身体を掴み、グイッと両手で頭上に持ち上げられてしまったのだ。


「うわああああああっ!!は、放せ、放せ!!」


辛うじて動く右手で日本刀をブンブンと振るけれど、怪物の身体にかすって小さな傷は付くものの、放してはくれない。


大きく口を開け、俺の身体に牙を立てようとしたその時だった。















道路の真ん中、塔の方から誰かが歩いて来る姿が見えたのだ。
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