殺戮都市
腕を伸ばして、日本刀の長さと合わせてもまだ葉山には届かないギリギリの距離。


なのに葉山の間合いとは。


「あ、もう逃げようとか考えないでね?お前らの話が気になっちゃってさ、話してもらわないと眠れそうにないから」


「逃げるつもりなどない。少年、この山を越えるぞ。それが出来なければ、到底目的など果たせないだろうからな」


恵梨香さんに退く気は全くない。


いつでも、どんな時でも恵梨香さんといれば、何でも出来るような気がした。


だから、その言葉が俺に勇気をくれる。


「あー、もう!逃げられないならやるしかないじゃないですか!」


立ち上がった恵梨香さんと二人、肩を並べて葉山と対峙する。


恵梨香さんを一撃で吹っ飛ばした葉山の武器が何かは分からない。


だけど、二人で同時に掛かれば、どうにかなるかもしれない。


ジリジリと間合いを詰め、恵梨香さんの動きに神経を集中させる。


「行くぞっ!」


その言葉と同時に駆け出した恵梨香さんに続いて、俺も一気に間を詰める。


葉山はまだ動かない。


同時攻撃でどう対処すれば良いか分からないのか、それとも反応出来ないだけなのか。


俺は葉山の脇腹に、日本刀を滑り込ませた。
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