殺戮都市
慌てて体勢を整えて起き上がり、何が起こったのかを確認する。


怪物は盾を前方に構えていて、さっきいた位置より随分こちら側にいる。


槍を回避された直後、盾を構えて体当たりか。


他の怪物とは比べ物にならないくらい強い異形の怪物に、俺は久しく忘れていた恐怖を思い出した。


「恵梨香さんがすぐに向かわないはずだ……こんなやつがいるなんて聞いてないぞ」


こいつ一匹で、他の怪物何百匹分の強さを持っているんだよ。


速いし強いし、斎藤を一撃で仕留めるくらい強くなった俺が、軽くあしらわれているじゃないか。


同じ槍でも、葉山とは全く違うタイプ。


葉山が静の槍使いなら、こいつは完全な動のタイプ。


まるで大型トラックとでも戦っているかのような威圧感がある。


周りにいる怪物達も、大人しく見守っているだけで俺に手を出そうとはしない。


群れのボスに従う獣のように、唸る事もせずにただジッと。


これは……斎藤に従って壁を作っていたやつらと変わらない。


人間も怪物も、結局は強いやつの言いなりになっていると言う点では同じなのだと理解した。


だけど……これはどう切り抜ければ良いんだ。
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