殺戮都市
殺される事はなかったけど……強引に身体を捻った時、槍の切っ先で左腕をパックリと切ってしまった。


色んな血が俺の身体の表面で混ざる。


俺を追い越して、再び進路を妨害するように立ちはだかった怪物。


もう少しで中央部の圏内から抜け出せそうなのに……こいつは行かせてくれないのかよ。


「ど、どけよ!俺は塔に行こうとしてないだろ!」


元はこいつも人間だったのかな?


だけど、俺の言葉は通じていないようで、槍と盾を構える姿勢を崩さない。


どうしても俺を殺すつもりかよ……。


何の対策も立てられないまま、ジリジリと怪物が俺に迫る。


どうすれば勝てる……なんて考えない。


どうやって逃げるかしか考えられない。


怪物が突撃して来た時にそれを回避して走る。


この程度しか手段を見出せないのだ。


他に出来る事と言えば……ビルの中に逃げ込む事。


だけどそれは追い込まれてしまうような気がして、選択肢からは除外だ。


逃げても逃げても追い付かれるなら……追い付かれないように、脚を狙うしかない。


殺せなくても良い。


追い付かれないくらいの傷を負わせる事が出来れば。
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