殺戮都市
「グルルルルル……」
この怪物と遭遇してから、初めて見せる怒りの表情。
普通の人間が相手なら、一気に畳み掛けるところだろうけど、どう考えてみてもこいつに勝てる手段が見付からない。
結局、どうやって逃げるかしか考えが浮かばないのだ。
「さあ……どうする?」
さっきまではその逃げる可能性さえ小さすぎて見えなかったけど、脚を負傷している今なら何とかなるかもしれない。
怪物は盾と槍を低い位置で構えて、俺の動きを警戒している。
脚への攻撃をかんぜんにガードしようとしているその姿に、獣の本能ではないものを感じる。
やはり知能がある事を教えてくれていた。
日本刀を構えて、チラチラと周囲を見回した俺は、逃走に使える物がないかと必死に考えていた。
街路樹、道の脇に停まった車、電話ボックス……どれもこれも、今の俺には意味のないように思えて。
どうにか逃げ回ってここから逃走するしかないという結論に達した。
ガッチリと守りを固めて、飛び掛かって来る気配がない。
……だとすると、そのまま逃げられるんじゃないのか?
脚を負傷した状態で、こいつがどこまで動けるのかは分からないけれど。