殺戮都市
100メートル以上はあろうかという壁が、街を取り囲むように設置されていて、街を分断する光が見える。


「あの光……何ですか?触ったら死んじゃうとか?」


この世界ならそれもないとは言えない。


「いや、あれは南軍と東軍の境界線だよ。戦闘が開始されると東軍が攻めて来るから、ディフェンダーが防衛するんだ。アタッカーは西軍の方にいるからね」


最初に選ばせたタイプってのはこの事かよ。


説明がなさすぎるんだよ。


いきなりこんな所に放り出されて、何も分からないまま戦えだなんて。


「新崎さんは……これは夢か幻かとか思わないんですか?何とかして家に帰りたいとか、思わないんですか?」


これが、俺の見ている夢であるなら、こんな質問をする事すら意味がないのかもしれないけど、聞かずにはいられない。


「……何度も考えたさ。考えて考えて、僕にはそれが出来ないという事が分かったんだ。だから、こうして新人の世話をしているんだよ」


そう言った新崎さんの顔は、少し寂しげに見えた。


こんな風に諦めた人が、他にも沢山いるのかな。


でも、中にはあのライダースーツの女性のように、戦いに慣れた人もいるのだろう。
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