殺戮都市
その目は、さっきまで狩野がいた場所に向けられていて、すでに懐に飛び込んでいる狩野を見ていない。


振られた日本刀が、中川の腹部に迫る。


攻撃のモーションに入ってやっと気付いた中川の、防御姿勢は間に合うはずもなく。


腹部に刃が触れるかどうかというタイミングで俺は叫んだ。
















「やめろおおおおおおっ!!」
















その瞬間、俺の……狩野の動きが止まった。


ほんの一瞬。


だけど、大きな一瞬。


勢いをなくした日本刀が、ピタリと中川に添えられて。


切り裂く力もなく、その僅かな隙を突いて中川がウォーハンマーの柄で刃を弾いたのだ。


「くっ!ただの宿主が私の邪魔をするな!」


「何なんだ……何がどうなってるのかさっぱり分からねえ」


狩野も中川も混乱気味に声を出す。


要所要所で俺が狩野の動きを止める事が出来れば、もしかすると何とかなるかもしれない。


恵梨香さんの腕と脚を斬り落とした時、まさかそんな事をするとは思わなかったから、動きを止める事が出来なかった。


それだけが悔やまれてならない。


一瞬……俺に与えられた時間はほんの僅か。


俺が殺されるタイミングで、動きを止めるしかないのだ。
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