殺戮都市
俺を警戒しているのか、庇うように女性の前に立った男性。


俺が何かしようとしていると考えているのだろうか。


普通なら、何もするわけないだろとムッとする所だけど……こうして助けてくれる人がいるのは良いなと、妙に羨ましく思えた。


だけど……その考え方では、ここから先何も変わらない。


敵に怯えて、戦う事から逃げていては。


「戦わないと、何も変わりませんよ。ずっとこのままで、他人に運命を任せるつもりですか?」


何もしなければキングが破壊されるか、自軍の誰かが北軍のキングを破壊するのを待つしかないのだ。


もう……俺の大切な人が死ぬのは見たくない。


そんな想いはしたくない。


半分抜け殻のようになった俺に、その言葉で怒った様子の男性が近寄って来る。


「人間な、出来る事と出来ない事があるんだよ!お前みたいなガキに何が分かるんだよ!強い武器さえあれば、俺だって戦ってやるさ!」


「け、敬二君、落ち着いて!それはこの子も分かっているから!」


今にも殴り掛かって来そうな剣幕の男性を、中年男性が止める。


男性に守られていた女性は相変わらず怯えたままで。
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