殺戮都市
階段を下りながら、改めて日本刀を握り締めて思う。


また死ぬような事があれば、狩野が出て来るんじゃないかと。


きっと、日本刀の中でその機会を狙っているに違いない。


そんな不気味な力を感じてしまうのだ。


「さて……やるか」


俺が目覚めるまでにずいぶん長い時間が流れたみたいだし、戦況も相当変わっている。


木部なら、恵梨香さんや中川の行方を知っているかもしれない。


それを聞き出す為にビルから出ようとした時だった。

















トンカチを握り締めた男が、勢い良くドアを開けて中に入って来たのだ。


「お?いたぜいたぜ!ガキが一人だ!俺に会った不運を恨めよ!」


俺を見るなり、ニタリといやらしい笑みを浮かべてトンカチを振り上げた。


北軍と南軍……敵だから、出会い頭で攻撃は当然だろう。


だけど、本当にそれで良いのか?


皆、この街のルールに従って、どちらかの軍を壊滅させて、そして元の世界に戻れば良いと考えているのか?


どうして誰も、バベルの塔に乗り込もうと考えないのか。


襲い来る男の胸に日本刀を突き刺し、そこから頭部に向けて一気に振り上げた俺は、ビルから出た。
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