殺戮都市
『南軍の新人の皆様、このたびは「バベル」にご登録くださり、ありがとうございます』
どこからともなく、奇妙な声が聞こえたのだ。
若いような、年寄りのような、性別も分からないおかしな声で。
「どこにいる!出て来いや!」
チンピラが叫んでも、声の主が出て来るはずがない。
『この世界で生きる為に、あなた方専用の端末を用意いたしました。すでに所持していますので、ご確認ください』
その声の通りに、制服のポケットに手を入れてみると……俺の携帯電話は見当たらなくて、その代わりに少し小さめのスマートフォンのような物があったのだ。
皆も同じ物を持っていて、不思議そうに首を傾げる。
『それは、あなた方の専用端末です。他人に譲渡する事は出来ません。また、紛失・破壊された場合、次回のエントリー時に死亡しますのでお気を付け下さい』
死亡……って何だよ。
それに、さっき南軍のって言ってたよな?
だったら、ここはさっきのゲームと関係があるのか?
そんな事があるはずない。
きっと、催眠にでも掛かって、おかしな夢でも見ているに違いないさ。
混乱する頭の中、押し寄せる不安を掻き消そうと必死にそう思い込むしかなかった。