殺戮都市
タラップを上り、やっと地上に辿り着いた俺は、ここがどこなのかを確認する為に辺りを見回した。


俺達が出たのは路地の交差点。


他の怪物の姿もなく、人影もない。


この街にしては珍しい、寂れたような印象を受ける。


だからこそ、この怪物も地上に出る場所に選んだのだろう。


それにしてもこの場所は……。


少し離れた位置に光の壁が見える。


それも、南軍から見える物じゃない。


光の壁の向こう側に、南軍のキングがあると言う高いビルが見えているからここは……。


「北軍に……入ったのか?まさかお前、俺が北軍に来たいと思っていたのに気付いて」


俺が話し掛けても、怪物はそれを無視して歩き始める。


……そんなはずはないな。


もしもそうなら、俺とこの怪物はどれだけ心を通じ合わせてるんだよ。


他に何か理由があるから、俺を案内したに違いないんだ。


そんな怪物の後を、再び付いて歩き出した俺は、路地を抜けて大通りに出た。


そこは、不思議と怪物達がいない道。


辺りをキョロキョロと見回している怪物も、不思議そうに首を傾げる。


「……人も怪物もいないな。だったら、チャンスじゃないのか?」
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