殺戮都市
返事なんてないと分かっているのに、怪物に話し掛ける俺は、どう見てもおかしなやつだろう。


でも、怪物もそう感じたのか、ゆっくりと様子を伺うように道の真ん中に歩いて行ったのだ。


俺もそれに続いて路地を出た。
















その瞬間。













「キャウン!!」


甲高い悲鳴を上げ、怪物が道路に転がったのだ。


その肩には矢が一本。


さらに、転がる怪物に、追い打ちとばかりに矢が突き刺さったのだ。


「な、何だ!?」


こいつは怪物で、人間に見付かったら殺される。


それは当然の事なのに……。


なぜか俺は、日本刀を抜いて怪物を庇うように立っていたのだ。


それでも容赦無く降り注ぐ矢を、すでに戦闘体勢だった俺は次々と切り落として行った。


なぜ、こんな怪物を守っているのかは分からない。


だけど、俺を襲おうともせずに、ここまで連れて来たこいつの目的が気になったから。


暫く矢の雨が降り注いで……急にそれらが止んだと思ったら、大通りの延長線上に何者かの影。


端末で誰かと話しているようで、ゆっくりとこちらに近付いているのが分かった。


怪物は……何本か矢が突き刺さってはいるものの、まだ生きているようで、俺はなぜだか安心した。
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