殺戮都市
「恵梨香さん!良かった……偶然だったけど会えて良かったです!」


思いもよらない再会が嬉しくて、怪物をチラリと見て三歩ほど恵梨香さんに近付いた。


胸の奥が熱い……苦しくて、キュウッと締め付けられるような感覚に襲われる。


今すぐ駆け寄って抱きしめたいのに、なぜか怪物を放ってはおけないという気持ちが足を止めたのだ。


「……偶然か。いや、必然だ。私はずっと少年を探していたからな。光の壁越えが困難になった今、ここで待っていればいずれ少年に会えると思って待ち続けた」


そう……だったのか。


確かに、以前にやっていたような中央部を突っ切るのは、怪物の数が増えた今は困難かもしれない。


だから北軍の、南軍が攻めてくる側に陣取って待っていてくれたんだ。


「あ、ありがとうございます。俺、この怪物にここまで連れて来てもらって……なんか、俺を案内してるみたいなんですよ。だから殺さないでやってく……」


俺がそう話していた時。


恵梨香さんがゆっくりと俺に近付いて、トンファーを俺の顔に向けたのだ。


「え」


ヘルメットのシールドの向こう。


恵梨香さんの眼差しは、鋭く睨み付けている物だと気付いた。
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