殺戮都市
やっと会えたと思ったのに……戦う事になるとか冗談じゃない。


殺し合う為にここに来たかったわけじゃないのに。


予想通り振り抜かれた左の攻撃を日本刀で受け止め、何とか信じて貰おうと口を開くけど、飛び出したのは言葉ではなく「うっ!」という声だった。


恵梨香さんの前蹴りが俺の腹部にめり込んで、次の瞬間大きく後方に弾かれたのだ。


何とか体勢を整えようとするけど……足がもつれて尻餅を突くように転倒。


見上げると、トンファーを構えた恵梨香さんが、俺を見下ろしていたのだ。


こんな時、「私に変われ!」とか言って、狩野が暴れ出しそうなのに……どういうわけか、日本刀はピクリとも動かない。


殺したいわけじゃない……だけど、この状況は間違いなく命の危機だと思えるのに。


「言い訳はもう終わりか?今ならまだ聞いてやるが、何も言わないで死ぬつもりなのか?」


冷たくそう言い放った恵梨香さん。


その言葉は、初めて出会った時に掛けられた言葉と似ている。


怪物に噛み付かれ、重傷を負った俺を殺したあの時と。


俺に……これ以上どう言えって言うんだ。


ずっと目覚めなかった事を証明出来る物は何もないのに。
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