殺戮都市
振り下ろされたトンファー。


それを見詰める俺。


どうすることも出来ないまま、あの時と同じように死ぬのかと。
















でも、トンファーは俺の頭部に直撃することなく、ブンッと音を立てて空を切ったのだ。


この瞬間、なぜ日本刀が反応しなかったのかが分かったような気がした。


狩野が暴れ出すきっかけとなる物は……殺意。


それが強ければ強いほど、狩野もまた強く反応する。


それが全くないと言うことは……殺意がないと言う事だ。


口では、殺意に変わったとか言っていたけど、微塵もそれが込められていなかったのだ。


「言い訳の一つもしないか!してくれたら……怒りに任せて殺せたのに。何も言わないのでは、怒りようがないじゃないか……」


ヘルメットの中で、溜め息を吐いたのが分かる。


首を横に振り、どうして良いか分からないと言った感じで地面を蹴って。


「怒らせるつもりなんてないんです。本当に今日目覚めたばかりで、一ヶ月経っていたってのも人に聞いて分かったんですよ」


「……嘘を吐いていないのは分かったさ。少年の動きも強さも、あの時と大して変わってないからな。もしも少年がこの一ヶ月間を生きていたら、もっと強くなっていただろうからな」
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