殺戮都市
俺の言葉を信じてくれた……と思うと同時に、もっと強くなっていたという言葉が引っ掛かった。


日本刀を強化していないから、強くなってはいないのは俺自身が分かっているとして、それでもそんなに簡単に追い付けるくらいの強さだったのか。


恵梨香さんは相変わらずトンファーを持っていて、死ぬ前の強さは俺と大差なかったはずなのに。


今は……俺を軽くあしらってすらいるような。


「それで……このポーンは何なんだ?少年とやけに親しそうだったが」


矢を受け、今にも絶命しそうな怪物を見下ろして、首を傾げる恵梨香さん。


「親しいってわけじゃないんですけど。こいつが俺をここまで連れて来てくれたんですよ。何か伝えたい事があるんじゃないかって思うんですけど」


俺達が話している間にも、何とか身体を起こそうとする怪物。


数時間前までの俺なら、容赦無く斬り捨てている所だろうけど。


どうしてもこいつが気になって、俺は起き上がるのに手を貸していた。


腕を掴んで立たせて、息も絶え絶えに再び歩き出した怪物を支えるように歩き出した。


そんな俺を見て、恵梨香さんは何を思っただろう。


バカなやつだとでも思ったかもしれない。
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