殺戮都市
恵梨香さんが子供の怪物を殺そうとしている事に気付いたのか、倒れていた怪物が最後の力を振り絞って起き上がる。


立ち上がる事はもう出来ないようで、上体だけ起こして、小さな怪物を守るように腕を広げたのだ。


「お前……そこまでしてどうして……」


そう呟いて、恵梨香さんを押し退けるようにして前に出た俺は……。
















なぜ、恵梨香さんがすぐにこの怪物を殺そうとしたのか、その理由を知る事になった。
















腕を広げる怪物の後ろで小さな声を出す怪物。


その顔の半分は、まだ完全に怪物になり切れていないのか、人間の時の顔が残ったまま。


そしてその顔が……。

















「あ……亜美?」














頭を、ハンマーで殴られたような衝撃が走った。


葉山に預けて、東軍の壊滅と共に死んだと思っていた亜美が……目の前にいたのだから。


「だから私が殺すと言ったんだ。少年では……亜美は殺せないだろう」


待て……待てよ。


この小さな怪物が亜美だとするなら、この怪物は……亜美を守っている怪物はもしかして。



「ゆ、優なの……か?」
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