殺戮都市
南軍で偶然俺を見付けて、怪物になってもなお、俺を覚えていてくれたのか。


人間と怪物、相入れない存在なのに、それでも俺に知らせようとしたんだろう。


今でも、亜美を守っているんだと。


「待って……待ってください恵梨香さん!こいつらはあの二人なんですよ!亜美と優なんですよ!殺さなくたって良いじゃないですか!」


気付けば俺も、変わり果てた二人を庇うように腕を広げて立っていた。


恵梨香さんと対峙するように。
















「そこをどけ、少年。醜い姿のまま生かしてやる事が、この二人にとって幸せだと言えるのか?永遠に怪物として生きるよりも、人間として死なせてやろうと思わないのか?」


恵梨香さんの言葉に、俺は何て返事をして良いかが分からない。


俺の考えが正しいのか、それとも恵梨香さんの考えが正しいのか、全く分からない。


分からない事だらけで、これ以上身体が動かない。










迷ってしまった。


その時点で、俺が二人を守る事なんて出来ないと理解していた。


動かない俺を避けるようにして二人に近付いた恵梨香さん。


トンファーではなく銃で。















パンパンという二発の銃声が辺りに響き……俺はその場に膝を付いた。
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