殺戮都市
悲しい別れがあった後、俺は恵梨香さんに半ば無理矢理連れて行かれるようにして、拠点にしていたという場所に向かった。


そこは、怪物となった優を狙撃した交差点。


その近くのビルの三階。


居酒屋になっているフロアに連れて来られて……魂が抜けた人形のように椅子に腰を下ろした。


「リーダー、こいつなの?松田を殺して北軍の体制を崩壊させたやつって。そんなに強そうには見えないんだけど」


窓の方から一人の女性が俺達に近付き、俺の顔を覗き込むようにマジマジと見ている。


いや、一人じゃない。


何人もの気配を感じるし、小さな声も聞こえている。


「翠、お前の矢はこの少年に何本当たった?怪物には当たったようだが、少年にはかすり傷一つ付けられていないようだが。それがこの少年の力だ」


俺の対面に座り、翠と呼んだ女性の額を指で弾く恵梨香さん。


「まあ……確かにそうなんだけどさ。それにしたって何があったわけ?こんなふにゃふにゃじゃ、すぐに死んじゃうよ?」


「それは……また話してやる。とにかく今は少年を休ませて、暫くしたら例の作戦を実行に移す」


「……いよいよやるんだね。任せといてよ」
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