殺戮都市
俺を無視しての話し合いは30分ほど行われただろうか。


気付けば、その居酒屋にいた人達が皆いなくなっていて、俺は恵梨香さんに促されるままに座敷に横になった。


混乱した頭を整理する為に、眠れというのだ。


疲れた身体と心は、俺をすぐに夢の世界へと誘った。


と、言ってもそれはほんの一瞬で。


気付いた時には俺は眠りから覚めて目を開けていたのだ。


どれくらい寝たのか。


心の傷を埋めるように、脳が二人の死を過去の物にしようとしているのが分かる。


「目が覚めたか?どうだ少年、もう動けるか?」


ずっと俺の傍にいてくれたのか、壁にもたれて座っている恵梨香さんが声を掛けた。


動けるけど……今はこれからの事はあまり考えたくはない。


「動けますけど、何をするんですか?もうバベルの塔に乗り込むんですか?」


何かをすると言うなら、それに乗っかった方が楽だ。


考える事は恵梨香さんに任せて、俺はただ日本刀を振るえば良い。


その刃の先に誰がいても、真っ二つにしてしまえば良いんだ。


守りたい物を守れる力もないのに、俺は一体何を守ろうとしていたんだ。
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