殺戮都市
「まあ、もしもそうだとしても、行くしかないですよね。嫌だって言ってやり直しが出来るわけじゃないんですから」


そう、俺達がいくら文句を言っても、この状況を改善することなんて出来ないのだから。


「そうだな。私達にはもうバベルの塔に行くしか道はないんだ。そこに何があって、どうなるのかを確かめる為にもな」


俺が目覚めるまでの期間、恵梨香さんはそれを実行する為に準備を整えて来た。


あの仲間達がその成果の一つなのだろう。


だけど俺と中川は……準備なんて何も出来はしなかった。


「……待て待て、俺は行くなんて言ってねえぜ?俺はこう見えて繊細なんだ。心に傷を負ったまま戦えるほど図太い神経してないんだよ」


ここに来て、中川が子供みたいな事を言い始めた。


人の想いはそれぞれ違うだろうし、そもそも俺達と中川の目的は全く異なっている。


戦えない人達を守りたいと思って武器を振るっていた中川にとっては、それを失ったという事は目的を失ったという事。


恵梨香さんに出会って、バベルの塔に行くことを目的としていた俺とは違うのだ。


だけど……そうだと分かっていても、失ったものに縛られて、動かない中川は歯痒く感じた。
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