殺戮都市
「……あんたの苦しみが分かるとは言わないよ。俺も守りたい人達を失ったけど、自分で守っていたわけじゃないから」


亜美と優……葉山なら守ってくれると思ったし、危険な目には遭わせたくないと思っていた。


そしてそれは、ずっと続くと思っていたけど、時の流れというものは残酷で。


時間の経過と共に街の状況は変わる。


少しでも加速し始めたら、まるでボールが坂道を転がるように速度を上げて行って……気付けば、止まれないくらいに勢いが増しているのだ。


そんな流れの中で亜美と優は二度死んだ。


そして理沙だ。


出会うはずがないと思っていた俺の恋人。


キングに脅され、俺が……。


勝手に動いた日本刀は、狩野が動かしたのだと今なら分かるけど、それを止められなかった俺の弱さが理沙を殺したんだ。


それでも心が完全に潰れなかったのは……バベルの塔に希望を持っているから。


都合が良くて、そんな保証なんてどこにもないのに考えている事があるから。


「でも、バベルの塔の頂上に何かあって、俺の大切な人達が皆生き返る……って思いたいんだよ。こんな街が、元の世界とは違う場所に作られてるんだから、ないとは言い切れないだろ?」
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