殺戮都市
あの塔には何があるか分からない。


外観だけはこの街の人間全員が知っているけど、内部は誰も知らないのだ。


圧倒的な存在感を放つにも関わらず、まるで石ころのようにそこにある事を気にしていない。


そんな奇妙な塔。


「でも、今から人を集めるみたいで少し時間が欲しいそうです。俺ももう一人、声を掛けてみたいんですけど」


「そうね。今すぐ突入……よりも、時間を空けて突入すべきだわ。準備ってものが必要よ」


大山田もうんうんと頷いて賛成してくれる。


「協力してくれるあてがあるのなら待つさ。焦って下手打ちたくはないからな」


店の前、意見がまとまった俺達は、出来る限りの準備を進めた。


皆諦めずに知り合いに声を掛けて、人員を確保しようと必死に説得する。


俺も、そんなに知りはしないけど隼人に連絡をした。


すると、「面白そうだな」と快諾。


世の中にはこんな理由で協力してくれる変わったやつもいるんだな。


でもそのおかげで、俺の知り合いには全員声を掛ける事が出来た。












……明美さんを除いては。














あの人は、協力してくれない。


俺が声を掛ければ、間違いなく断るだろうから。
< 702 / 845 >

この作品をシェア

pagetop