殺戮都市
一通り連絡し終わった俺達は、再び店の中に入って休む事にした。


準備には時間が掛かる。


それを俺達の都合で早める事なんて出来ないから。


以前、松田と戦う前にここに来た時と同じようにカウンターの席に着き、対面に移動した大山田と向かい合う。


「さてと……その時が来るまで、皆で食事でもしましょうか。簡単な物なら作れるから」


「食事か……どれだけ食べていないのか忘れてしまったな。何も食べなくても空腹にならないどころか、こうして生きていられるのはよくよく考えると不思議だ」


頬杖を突いて、微笑みながらそう言った恵梨香さん。


笑顔なんて久し振りに見たな。


俺が覚えている恵梨香さんの顔は、いつも険しくて。


そうでなければメットに隠れて分からなかった。


この街で笑っているやつなんて滅多にいない。


いや、ヘラヘラ笑っていたら、人なんて殺せないから笑う事を忘れているのだろう。


それでも、時折見せてくれる色んな人の笑顔が、嬉しかったのは間違いない。


だから、それを守ろうと頑張って来れたんだ。


俺も、中川も。


不意に見せた恵梨香さんの笑顔が、そうなんだと思い出させてくれた。
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