殺戮都市
「……続きは私を見付けられたらという事にしよう。ここで満足してしまったら、バベルの塔に行かないと言い出しかねないからな」


唇を離し、小声でそう呟いた恵梨香さん。


続きは元の世界で……か。


もしも、バベルの塔を攻略する事が出来たとして、元の世界に帰る事が出来なかったら?


結局、自軍以外の全てを壊滅させなければならないとしたら?


そうだったら、その約束自体が無意味な物になってしまう。


それなら、今この場で押し倒して、欲望に身を委ねた方が良いかもしれない。

















「わ、分かりました。絶対に探します」


だけど、大人の女性を前に、そんな事が出来る勇気なんて俺にはなくて。


思えば、奈央さんが無防備な姿で隣で寝ていても、臆病な俺は何もする事が出来なかったんだ。


それがいきなり強引になれるはずがないじゃないか。


「よし、良い子だ。じゃあ出発まで身体を休めるとしよう。疲れが抜けないまま戦うと、いざという時に力が出なくなるぞ」


恵梨香さんに子供扱いされて、俺は再びソファに横になった。


結局俺が期待したような事は何もなくて、不満を感じながらも目を閉じて眠りに就いた。
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