殺戮都市
真っ二つ……のはずなのに、クイーンは倒れずに、ジッと俺を見下ろしている。


今までのどんな怪物も、ここまでやれば生きてはいられなかった。


それなのになんだこいつは。


真っ二つにしたというのに、まるで負けたかのような恐怖を感じる。


「……認めよう。お前は力を示した。主に会わせても良いだろう」


不意にクイーンの口から飛び出した言葉に、俺は安堵の吐息を漏らした。


これ以上ないというくらいの、生まれて初めて味わうような安心感。


それほどまでにこのクイーンは、得体が知れなくて不気味だったから。


「やった……やりましたよ恵梨香さ……」


呼吸を整えて、恵梨香さんがいる柱の方に顔を向けた時だった。


















今まで目の前にいたクイーンがいつの間にか移動して……恵梨香さんの前にいたのだ。








「お前を認めはしない。力無き者は……塔から去れ」










その言葉の直後、恵梨香さんの胸がクイーンの手で貫かれた。


「あ……」


小さな、本当に小さな悲鳴が聞こえて……。


クイーンは恵梨香さんの身体から、ゆっくりと腕を引き抜いたのだ。
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