殺戮都市
「ではそこに紳士にやって頂きましょう!あなたは幸運な方だ!」


離れたいのに……興奮した人に押されて動けない。











「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」












ざわめきが、一つの言葉となり何度も繰り返される。


まるで呪いのように唱えられて、こうして人を殺す事が当たり前になって罪悪感が薄れて行くんだろうなと感じずにはいられなかった。


「おっと、この紳士の武器は木製バットだ!!さあ、何回目で殺せるかな!?」


ガタイの良い男と観客に煽られて、木製バットの男が大きくそれを振りかぶる。


歓声にの中、ゴンッという鈍い音が俺の耳に届いた。


とてもじゃないけど見られない。


明美さんにも見せないようにと、抱き締めるようにして、何とかここから離れようと人混みを掻き分けて移動した。


「ちょっと、通してください!出ます!」


俺がそう言っても、皆の意識はステージ上の虐殺ショーに向いていて、思ったように進めない。


何度か殴るような音が聞こえた後、観客からさらに大きな歓声が上がった。


東軍の男が……殺されたのだろう。
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